「ゆきゆきて、神軍」 [映画・ドラマ・アニメ]
いつか見たいと思っていた1987年のドキュメンタリー映画「ゆきゆきて、神軍」がアマプラで配信されているのを発見。
うっかり「推しの子」の最新話に続けて…見てしまい…ました…。
「神軍平等兵」を名乗り、昭和天皇の戦争責任を過激に追及した奥崎謙三のドキュメンタリーです。
アナキズム(英: anarchism、仏: anarchisme、露: анархизм、アナーキズムとも)は、国家権力や宗教など一切の政治的権威と権力を否定し、自由な諸個人の合意のもとに個人の自由が重視される社会を運営していくことを理想とする思想のことですが、奥崎謙三は…
「アナーキスト」以外にこの人を表現できる言葉が見つからない。
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元日本陸軍の上等兵
金銭トラブルから不動産業者を刺殺し、傷害致死罪で懲役10年
皇居の一般参賀で昭和天皇にパチンコ玉を発射し暴行罪で懲役1年6か月
天皇一家の顔写真をポルノにコラージュしたビラ数千枚をばら撒き、猥褻図画頒布で懲役1年2か月
↑代表的な事件はこの3件だけど、他にもいろいろ…いろいろありすぎ…
"神軍"の旗をたなびかせ、日本のどこへでも街宣車で疾走する奥崎は、自分が所属した独立工兵第36連隊で、終戦後23日も経ってから"敵前逃亡"の罪で二人の兵士が射殺された事件があったことを知る。
奥崎は処刑に立ち会った五人の上官をアポなしで訪問、彼らを追いつめてゆく。
いったい誰が二人を撃ったのか。
暴力と怒声で問い詰めるうち、凄まじい飢餓状況の戦場で起きた恐ろしい出来事を、彼らは語り始める…
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いやちょっとヤバいって。
「え、それ言っちゃうんだ!!!???」という証言のオンパレードで、ゴリゴリとSAN値が削られる凄まじいドキュメンタリーでした。カオス…!!
こんなもん夢に見るやろ。
黒豚、白豚ってさあ…「軍から黒豚はいいが白豚は駄目だと命令が出た」ってさあ…(「豚」は隠語です。本編見てください)
令和に生きる我々は奥崎の凄まじい執念と怨念に平伏すしかない。
狂っているのは彼なのか、それとも我々なのか?
Amazon prime「ゆきゆきて、神軍」
「雄獅少年/ライオン少年」 [映画・ドラマ・アニメ]
中国アニメの凄さはもはや周知ですが、この「雄獅少年/ライオン少年」はフルCGアニメーション。
日本のアニメを観て育った中国の若いクリエイターが、こんな作品を作るようになったのか…いやすごいわ。
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広東の田舎で暮らす少年チュン。
家は貧しく、広州に出稼ぎに出ている両親とはもう何年も会っておらず、祖父と二人で暮らしている。
ある時、自分と同じ名をもつ少女の素晴らしい獅子舞を見たことで、チュンは獅子舞の世界にあこがれを抱くようになる。
自分もあんなふうに舞うことができたら…!
チュンに誘われ参加したマオ、そしてマオの知り合いのワンとともに獅子舞チームを結成したチュンは、若いころは町一番の獅子舞の踊り手だったという干物魚屋の店主チアンに師事し、獅子舞競技会の出場権を手にする。
しかし父親が怪我したことでチュンは一家の生活と父の治療を支えなくてはならなくなくなり、出稼ぎに出ることに。
いくつも仕事を掛け持ちし、都会の生活に疲弊したチュンは獅子舞の夢を諦めようとするが…
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とまあ、夢と憧れ、挫折、でも諦めない青春ストーリー。
激アツ、胸アツでイントロからつかみはオッケー!
いや面白かったです。
獅子舞のシーン見てるだけでもワクワクする。
ラストの余韻もよかった。
ぜひ映画館でご覧ください〜
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中国の獅子舞ってただ舞うだけじゃなく、格闘技や曲芸の要素もあり、もちろん危険も伴うスポーツのようなもの。
フィギュアスケートと似てるかもしれない。
下にyoutubeの動画貼り付けてますが、これ2人で演技してるんですよ…
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そういえば世界初のCGアニメ「レンズマン」の劇場公開を観ています私。
まさに隔世の感…
「ブルー・バイユー」 [映画・ドラマ・アニメ]
韓国で生まれ、3歳の時に養子としてアメリカに連れてこられたアントニオ。
大人になったいまはキャシーと結婚し、連れ子のジェシーと3人で貧しいながらも幸せに暮らしていた。
ある時、些細なことで警官とトラブルを起こして逮捕されたアントニオは、その過程で30年以上前の養父母による手続きの不備が発覚。
移民局へと連行され、国外追放命令を受けてしまう…
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'80年代~'90年代に韓国から養子として渡米した多くの移民たちが現在直面している社会問題。
数十年暮らした国からいきなり「自国へ帰れ」と言われても、彼らの「自国」はアメリカであり、生活基盤もない、もしかしたら言葉もおぼつかない国へ強制送還されても、どうやって暮らせるというんでしょう。
でもこれ日本でもある話だからな…
大手企業の城下町で働く外国人労働者が工場閉鎖と共に解雇になって、自国に帰っても生活基盤はないし、日本で生まれ育った子どもは日本語しか喋れないとかね。
ツラ。
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いい映画だったんだけど、主人公一家、「お金がない」という設定なのにお洒落な家にお住まいで、日本人感覚で「えっ、こんな広いお宅に住んでるのに貧乏設定なの?小学生の娘に個室ありでダイニングもめっちゃ広くて綺麗なんだが??」とか思っちゃって集中できなかったよ…
あと、まあこれはどの映画もそうなんだけど、キャシーの連れ子のような役回りは必ず「女の子」なんだよね〜〜。
わかる〜でもモニョる〜〜
映画でよくある、昔別れた恋人が知らない間に自分の子供を産んで育てていた…なんて時も必ず可愛い女の子。この設定で「男の子」だったことって、私が知る限り無い。
なんかこう…大人の男のケアを小さな女の子にさせるのってそろそろやめにして欲しいんだわ。
いや、いい映画でしたけどね!
「テロ、ライブ」 [映画・ドラマ・アニメ]
不祥事を起こし、テレビ局からラジオ局へ左遷された人気アナウンサーのユン・ヨンファ。
ラジオ番組の生放送中、正体不明のリスナーからソウル市内の漢江にかかる麻浦大橋を爆破するという脅迫電話を受ける。
いたずらだと思い電話を切るが、その直後に麻浦大橋は爆破で寸断されてしまう。
相手が本物のテロリストだと確信したヨンファは、このスクープを報道アナウンサー復帰のチャンスにしようと、犯人との通話の生中継を始めるが…
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軽い気持ちで見始めたけど、面白くて前のめりになってしまった。
舞台はほぼ放送局の一室なので、ちょっと舞台演出っぽくもある。
報道番組への復帰のために犯人を独占したいヨンファ、
70%の視聴率をとって取締役の座を狙う放送局長、
メンツのためにテロリストを恫喝する警察トップ、
支持率維持を最優先する大統領。
それぞれの「大人の事情」が入り組んで、まあエグいこと。
規模は違えど本邦でもこのテの事件はこれから増えていくんだろうな…
「マルサの女」 [映画・ドラマ・アニメ]
「午前十時の映画祭」で数十年ぶりに観てきました「マルサの女」。
マルサとは、国税庁と国税局に配置されている国税査察部のこと。
1987年だもんな〜36年前!
ショルダー型の携帯電話、黒い画面に緑色の文字が走るディスプレイ、そうそうこの頃は本人確認なしで銀行口座が作れたんだよね〜とか、当時を知らない若い人には「?」な場面もあるかもしれない。今は銀行で印鑑なんてあまり使わないしね。
でも映画の面白さはまったく色褪せない。
冒頭10分の「つかみ」がすごいじゃん。
色、欲、金、金、金。
うちの父は銀行員なので、たしか会社から「観に行くように」と通達があった気がする。
当時はとにかく預金獲得!の時代だったから。
しかし今は「しょぼい口座なんか作られると維持費がかかるから、口座を作らせるより手数料で稼げ」って感じ…直営のATMもどんどん廃止してコンビニATM使わせる手数料商売。
宮本信子がめちゃくちゃキュートでチャーミングだし、山崎努もカッッッッコいい。
そして映画全体に漂うフェミニズムに痺れる。
伊丹十三作品は配信しないので映画館で見れる人は見たほうがいいよ!!!
「ヒトラーのための虐殺会議」 [映画・ドラマ・アニメ]
すべてのドイツ占領下および同盟国から東ヨーロッパの絶滅収容所へのユダヤ人強制送還の始まりとなった「ヴァンゼー会議」。
実在の議事録に基づき、その会議を再現し映画化。
会議の議題は「ユダヤ人問題の最終的解決」について。
ヨーロッパのユダヤ人の移送と殺害について、分担と連携を話し合う会議です。
いかに迅速に、費用をかけず、人道的(!)にユダヤ民族を絶滅させるか、ナチスの高官たちのそれぞれの立場と思惑から行われる活発な意見交換。
BGMもなく、淡々とした会議の場面が2時間続くんだけど、どのシーンを切り取ってもグロテスク。
この議事録が廃棄されずに残っていて公開されてるってすごいな…
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結構客席が埋まっていて、年配の男性が多かったかな。
第2次世界大戦時の世界情勢や人名地名の基礎知識がないと何が何やらわからない映画だと思うけど、そういう知識って大事ね。
ちょうど同じ時期にNHKの元祖「映像の世紀」の何度めかの再放送があったので、併せて見るとわかりやすいと思います。
そもそもユダヤ民族迫害の歴史は聖書の時代にまで遡るわけで、「アラビアのロレンス」も「インディジョーンズ」も、歴史を知っているとちょっとしたセリフのひとつひとつがクリアになってくる。
戦争っていきなり起きるわけじゃなくそこには必ず大国の思惑や利害が絡んでいるので、「インディジョーンズ」を観て「ナチスってなんだろ?」と思って知りたがる若い人が増えるといいなあ。
私たちの世代は少女漫画誌で戦争を学ぶ機会がたくさんあって(りぼんやマーガレットに、フツーに戦争漫画が載ってた)私はアウシュビッツも満州もマンガで学んだけど、今はもうそんなこともないし学校じゃ教えてくれないからね…
「オットーという男」 [映画・ドラマ・アニメ]
深いこと考えずに安定して見ていられる…
ちょいと優等生すぎますが、のんびりゆったりしてて面白かった。
イーストウッドの「グラントリノ」みたいに殺伐としてないしな!
しかし妻のアーニャが亡くなったのは「半年前」と言いつつ、回想シーンに若い頃しか出てこないのはどうなんだ。
家に飾ってある写真も数十年前の写真って不自然じゃない?
途中まで妻を亡くしたのは新婚時代なのかと思っちゃってたよ。
それはともかく、実は全編に猫が出ていてこれがとても可愛いのです。
全く毒のない映画なので、初めてのデートムービーとしてもどうぞ〜
「MEN 同じ顔の男たち」 [映画・ドラマ・アニメ]
ここ数年、日本でも急速にファンを拡大している映画制作・配給会社「A24」作。
「ミッドサマー」「へレディタリー/継承」「ムーンライト」…あ、これから公開の「EVERYTHING EVERYWHERE ALL AT ONCE」もA24なのか!
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DV夫に目の前で自殺されたトラウマを抱える主人公ハーパー。
心の傷を癒すため長期の休暇を過ごそうと訪れた田舎町で起こる不気味な出来事…彼女の周りに現れる「同じ顔の男たち」はいったい何者なのか?
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ぶっちゃけこれほどキモい映画もないんだけど映像の美しさとの対比よ…のどかな田舎町の美しい背景、素晴らしい調度のゲストハウス(こんなとこ泊まってみたい!!)に次から次へと現れる男たちのキモいこと。
なんでこんな話を思いつくんだよ…!???
有害男性が有害男性を増殖させていく様が美しくもグロテスク。
私はすごく面白かったけれど、おそらく「全然つまらなかった。なにこれ?」という人も多いと思われます。
ああキモい…
まあ、後半のキモさより前半の男連中のほうがキモさ100倍です。
いるいるいるよな、こういう男。
「THE FIRST SLAM DUNK」 [映画・ドラマ・アニメ]
監督も脚本も井上雄彦なんだ!???
…と、クレジット見てびっくり。
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一時代を築いたスラダンですから、原作はコミックス買って読んでいる(アニメは観てない)んですががが。
綺麗さっぱり内容を忘れていて、どのくらい忘れているかというと「リョータって『要チェックや!』の子だよね」と思い込んでいたくらい…
おかげでスラダン初見くらいの気持ちで雑念なく観られました。
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上映時間が2時間超えているので「マジか」と思ったけど全然飽きなかった。
日常生活と試合が交互に来る構成、原作でメインのエピソードはかなりバッサリとカットされているけど、そのバランスもいい。
試合のシーンはこれもうCGの勝利というか、回り込みでぬるぬる動くし、音の臨場感も映画館ならではです。
あれ、この手法なら全キャラ分の映画作れるんじゃ…?と思ったけどそんなことには多分ならない。
ここでリョータを主役にしたあたりが拘りなんだろうなあ。
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10〜20代でスラダンに夢中になったけど今はもう漫画もアニメも離れてるよ〜って人は行ったほうがいいよ!
「すずめの戸締まり」 [映画・ドラマ・アニメ]
正直言って観るつもりはなかった。
何しろ深海監督の描く「女子高生、女子中学生」が、前2作であまりにもその、気持ち悪かったんで。もう新海誠は見なくていいやと思っていたんです(ちなみに細田守はその上を行く。見たくない)。
それが「すずめの戸締まり」公開と同時に私のTwitterのタイムラインに「新海誠の異常性癖が女子高生を通り越して成人男性に向いてる」という謎の書き込みがあちこちに発生しているではないですか。
あの新海誠が…成人男性を…描いている…だと…?
そんなん見に行くしかないでしょう。
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面白かったです。
すずめが閉じなければならないあの「ドア」は「あの世」と「この世」の境界線。
今はもういない懐かしい人がその向こうにいるならば、私ならその境界を超えるだろうか?
…ちなみに上の画像はポスターに貼り紙してありますが、「地震や津波の映像が出ますのでご注意ください」との注意書きです。
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主人公の苗字が「岩戸」なので古事記のイザナギとイザナミと千引岩をモチーフにしているのは間違い無いでしょう。
ん、そういや「天気の子」も主人公は鳥居をくぐって力を手に入れたんだっけ?
厨二病の人はみんな古事記好きですからね…