クララの旅立ち [うち猫]
8月7日、クララが旅立ちました。
16オと11か月。
フェイちゃんと同じ年齢で同じ8月にいっちゃうなんて。
路上出身のフェイは誕生日が分からず、「おそらくこのあたり」と決めた誕生日が9月26日。
クララは5年後のその日に生まれました。不思議。
プチポンさんが不妊手術のために捕獲した野良ママから生まれたクララ。
手術予定日が数日ずれていてば生まれなかった命でした。
ママ猫のヘその緒が絡みついたせいで左後ろ足を失くしてしまったけど、室内生活にはなんの支障もなかったです。
クリスマスの直前に我が家にやってきました。
「クララ」は保護してくれたプチポンさんでの仮名だったけれど(アルプスの少女…)、偶然にも私の洗礼名と同じだったためそのままに。
クララ、キアラ、またはクレアとも呼ばれる、目や眼病の守護聖人。
猫風邪が治りきっていなくてくしゃみしては家中に鼻水を飛ばしてたクララ。
ほかのきようだい猫よりずっと小さくて、片手に乗るくらいだった。
失くした左足は成長期に皮膚が破れたりで3回も手術。
レジ袋が大好きですぐにシャクシャクと食べちゃうし、なんでも口に入れてしまうので、我が家ではずっと「レジ袋の床置き禁止」「輪ゴム類はすぐ片付ける」が鉄則。
私のスリッパで爪とぎするのが日課で、スリッパはいつもボ口ボ口。
私は気持ちよく爪をとげるような材質のスリッパを選んで買っていました。
小さな体だけど性格はなかなか激しく、動物病院では外まで聞こえる絶叫で威嚇する子でした。
苦労したよクララん…
フェイとはべったり仲良しではなかったけど、付かず離れずのいい関係で喧嘩は一度もありませんでした。
マイペースな性格で、朝の見送りも夕方の出迎えもせず、膝に乗らず、ふみふみもせず、人間の布団に入っても10分で出ていっちゃう。
そういえば顔を舐めてもらったこともないや。
だからたまに膝に乗ってくるとすごく嬉しくて。
フェイは私の師匠であり母であり同志でしたが、クララはいつまでも小さくて童顔で子猫みたいで、「自分の子どもみたい」としか言いようがなかった。
春に食欲が落ちて、カリカリを食べなくなりちゅ〜るだけで数日過ごしたことがありました。
でも食欲も戻り、まあまあいい感じに食べているし、このまま騙し騙しあと数年いけるかな…腎臓は年相応に悪いけどなんとか…と思っていたのですが。
7月の終わり、久しぶりにカリカリを全く食べず。
ちゅ〜るもミルメルもカルカンもダメ。
いつもの食欲不振とはあきらかに様子が違う。
その3日後にはいつもは行かないお風呂場の床に寝そべるようになりました。
これはフェイちゃんと同じパターンだ。
もしかして死ぬ準備を始めてるの?
え?
いきなり?
病院に…と思わないわけではなかったけど、行きませんでした。
検査すればあちこち数値が悪いのはわかってるし、通院して治療して、17歳近い猫がそれで回復するとはとても思えなかった。
フェイの時のような強制給餌もしないと決めていたし、とにかく慣れた自宅でゆっくり過ごさせたかった。
苦しそうでもなく、痛そうなそぶりもなく、ただ食欲がなくなってひっそりと痩せていく。
とはいえ萎えるスピードが早すぎました。
金曜日には1階と2階を行き来して私のベッドに朝の挨拶に来ていたのに、土曜日に足元がおぼつかず猫用のミニ椅子に乗れなくなり、日曜日に歩けなくなり…
昨日の夜は猫トイレでオシッコしていたのに。
今日はもう立ち上がることもできない。
日曜日、起き上がれなくなったクララを2階の自室に連れてきました。
私のベッドの下に行きたがったので猫ベッドを置いてやったのですが、床に移動したがるのでバスタオルを敷いてその上に寝かせることに。
もう明日一日は保たないかもしれない。
私はクララの横に布団を敷いて、様子を見ながら横になっていました。
すごく静かで、お腹がかすかに動いているから「まだ生きてる」って思うくらい。
うとうとしていたけど、ふと目が覚めた午前2時半、手を伸ばしてクララの体を撫でていると、クララが小さく「ケホケホ」と咳き込みました。
手足をパタパタ動かしたので抱き上げて膝に乗せるとまたひとつ小さく…ほんとに小さくケホンと咳き込んで…そのまま動かなくなった。
あんまり静かだったのでクララが死んでしまったことを確信できなくて、何度も手や耳やお腹を触っちゃった。
そんな最後でした。
仕事の配置換えがあって月曜日は休めない。
早退するにしても数時間は留守にしなきゃいけない。
その間にクララが死んじゃったらどうしよう…私がいるうちに旅立ってくれたらいいのに。
そんなふうに思っていた私の望み通り、たまたま目が覚めたその時間に、私の膝の上で看取らせてくれるなんて、そんなことある?
フェイは気遣いの塊のような猫だけどクララんはマイペースだね…なんてずっと言っていたのに、最後の最後でまるで時間を計ったように旅立ちました。
フェイちゃんがきっと迎えに来てくれたから、迷わず天国に行けたと思います。
ちっちゃくて可愛くて気の強い私のクララ。
17年近くも毎日抱き上げた、あのすべすべとした柔らかな体に触れることはもうないんだ。
夜中に聞こえたいろんな音。
階段をのぼってくる足音。
廊下の水入れから水を飲む音。
お皿のカリカリを食べる音。
私のベッドに飛び乗って布団をふむ音。
そんな音がすることもない。
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今は猛烈に寂しいけれど、でもそう遠くないいつか、私がそっちにいく時はフェイとクララが迎えに来てくれるはず。
うちの猫になってくれてありがとうね。
大好きだよ。