「九月、東京の路上で」加藤 直樹 [本]
Twitterでレビューが流れてきて即購入。
…お若い方、もしや永井豪先生の「デビルマン」(テレビアニメじゃなくて、漫画のほうね)をお読みになったことのない人も多いのかと思いますが、あの名作は全人類修復してほしい。
私はある程度大人になってから読みましたが、子ども時代にあれを読んでいたら一生もののトラウマになると思う。
「九月、東京の路上で」は、1923年関東大震災における朝鮮人虐殺の証言集です。
これがもうルワンダ内戦と並ぶ「リアルデビルマン」で…
20世紀の日本の首都でこんな惨劇があったなんて。
関東大震災の時、「朝鮮人が井戸の毒を入れた」というデマが流れ、混乱のままそのデマを信じた一部の人たちが朝鮮人に危害を加えた…知識としてはぼんやりと「そういうことがあった」のは知っていましたが、市井の人の証言の数々は重みが違う。
当時の子どもたちが描いた絵も多数掲載されていて、これがまた拙いぶんリアルで…
東日本大震災の時に、また「そういうこと」が起こるのではないかと言われていて、その時は「21世紀の日本でそんな馬鹿な」と思ったけど、「そういうこと」はいつどこででも起こり得るんだ。
30年前のルワンダで、100年前の日本で、驚くほど同じなりゆきでごく普通の民間人が虐殺に加担し、それを誰にも止められない。
プロパガンダと差別と煽動で少しずつ育った種が、何かの拍子にポンと破裂して飛散するように虐殺が始まり、昨日までの隣人がナタで襲ってくる。
21世紀の日本で同じことが起こらないなんて誰に言えるだろう?
殺されるのも殺すのも自分かもしれない。
あの牧村美樹ちゃんの首を切り落とした「近所の人」みたいに。
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小池百合子は都知事就任翌年の2017年以降、関東大震災朝鮮人虐殺追悼式典への追悼文を拒否しています。あの石原慎太郎さえ送っていたというのに百合子…
私世代が子どもの頃は少女漫画誌に当たり前のように戦争マンガが掲載されていた時代で、私たちはそれを読んで「戦争」を学びました。
学ぶこと、知ること、語ることが「当たり前」だったし、それを否定する人は少なくとも私の周りにはいなかった。
それが、ここ最近になってそういう体験や記録を「嘘だ」「捏造だ」「ソースを示せ」と否定する層がどんどん増えてきてるのは恐ろしいことです。
当時の新聞や裁判の記録も山ほどあるというのに、東京都知事みたいな人が撒いた種が何年もかけて芽吹いてきたってこと?
歴史を学ぶことをしないなら、私たちはまた同じことを繰り返すよ。
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今の東京でこのクラスの災害が起きたらと思うと恐ろしい。
私はデビルマンやバイオレンスジャックの世界には生きたくないです。
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