「我が名はエリザベス」 入江 曜子 [本]
ラストエンペラー愛新覚羅溥儀の妻、婉容皇后の「架空の回想録」というスタイルのノンフィクションノベル。
婉容の一人称で書かれた本とは知らなかったので、捲ってびっくり。
歴史ドキュメンタリーでもあり、小説でもあり。
分厚くてフォントが小さくて読めない漢字がたくさんあって「うわ〜、読み切れるかな?」と思ったんですが、さくさく読めました。
但し読めない漢字は無視したので、とくに人の名前(中国語)が全然覚えられなかった…
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NHK BSで「中国王朝英雄たちの伝説〜悪女たちの裏切り」という番組をやっていて、悪女の一人として取り上げられたのが溥儀の妻婉容と側室の淑妃(文繍)。
米国人家庭教師から「エリザベス」と呼ばれフランス租界に育った少女婉容が、のちに満州国皇帝となる清朝のラストエンペラー溥儀と結婚したことで辿る数奇な生涯を短くまとめた番組でしたが、もともと満州国時代が大好きなのでとても面白く、婉容について書いた本がないかなーと思って見つけたのが「我が名はエリザベス」です。
もう絶版なので古本で購入しました。
小説仕立てなのですんなり入り込めるとはいえ、歴史の知識がないと相関図が読めないかも。まあ、この時代の歴史に興味にない人はそもそも手に取らないか…
はるか昔に里中満智子先生の「あした輝く」を読んで「満洲」というものの存在をはっきり知って以来、この傀儡国家は私の厨二病の原点になりました。
映画「ラストエンペラー」、溥儀の弟溥傑と結婚した嵯峨 浩の自伝「流転の王妃の昭和史」、李香蘭の自伝、川島芳子のノンフィクション…いろいろ見たり読んだりしたもののパーツを組み合わせると、経緯や相関図への理解が深まって俄然面白い。
婉容について史実の記録はほとんどないらしいのですが、乏しい資料でよくもこれほどの大作を…と感嘆する本でした。
しかも作者は日本人で主人公は実在の人物で中国人なのに、まるで翻訳物の小説を読んでいるような世界観。
序盤の、溥儀との結婚式や初夜の描写あたりは、アニメの「天官賜福」みたい。幻想的で美しくも残酷。あの雰囲気でアニメにしたらいいだろうなあ。
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17歳で結婚、夫はすでに亡き王朝の廃帝しかも同性愛者、阿片中毒になり、日本の傀儡国家に利用され、最期は腐臭のする牢獄で阿片の禁断症状に錯乱しながら亡くなった、というのが通説です。
なんて生涯だろう。
溥儀の「わが半生」も読まねば…
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